小学生の子どもの自由研究は、毎年頭が痛いテーマです。子どもが自主的にテーマを決めて取り組んでくれればよいのですが、なかなかそうもいきませんよね。
工作系はありきたりだし、調べものも手間がかかるし…。そんな時には、公的な機関で開かれている子ども向けのイベントが便利です。ふだんは入れない施設で、専門のスタッフと実際に体験しながら学べるのだから子どもも目を輝かせて参加します。実験や観察で手を動かしながらのイベントは、記憶にも残るし自由研究にもまとめやすいのです。
いくつか参加していますが、以前体験した「保健所の手洗い実験教室」の模様を備忘録として残しておきます。
自由研究、けっきょく親がやっていませんか?
結論から言いますが、私は自由研究にはそれほど力を入れていません。もちろん、興味あるテーマを選んでじっくりと取り組む。自由研究は、長いお休みにしかできないような学習です。自主的な力を伸ばすという意味で、自由研究の意義は理解しているつもりです。
理屈は分かっているのですが、いかんせん自由研究を完成させるには結構なエネルギーが要るんです。これでも、小学1年生2年生まではさんざんテーマを考えあぐねて、素材を集めて調べに出向いて、文章と写真をまとめ、模造紙へのレイアウトを考え清書。かっちりテーマが決まってからでも、1週間は軽くかかります。子どもが主体となってやってくれるのならまだしも、ほとんど親の仕事です。
そして、学校に持っていって各自発表もしポスター展示のようなことはするのですが、それっきり。1年後に収納から出てきた自由研究を見た子ども本人に「何これ?」と言われて、ガッカリしたのを覚えています。親が手をかけすぎたのも良くないのでしょうが、手伝わなければ完成しないのですよね。低学年ならなおさら。そうしたことから、あまり気合を入れないようになっていました。
簡単で見栄えのする自由研究なら、教室イベント参加がベスト
時間がかかり過ぎるし、子どもの自主性がみられないのであまり凝ったことはしないようになっていました。その代わり、実験や観察が充実している外のイベントに参加させてもらう方向にシフトしてきています。
参考 無料で学べる小学生向けイベントは探せばたくさん





簡単な実験系は、書店でコーナーを設置されていることもあります。少量の材料・キットが同梱されているので無理なく家庭でも試すことができます。もうちょっと気合を入れるのならば、小売りをしている教材屋さんに問い合わせると分けてもらえます。個人的には自作するのも好きなのですが、子どもに分かるように解説することも考えに入れるとハードルが上がります。また、材料を一揃えするとまあまあお金もかかるんですよね。内容にもよりますが5000円近くかかることも。
面倒、お金をかけたくない、説明も難しい。そんな親の助けになるのが公的なイベント、教室です。長期の休みに公的な機関であれこれ企画し開催しています。学校から案内をもらってくることもあれば、街中にポスターが貼られていることもあります。各種団体がHPなどで募集していることもあります。一番分かりやすいのが、市の広報誌です。長期休み前に小学生向けのイベントの特集をすることがありますよ。
たいていは無料かワンコイン程度の参加費。ありがたいことに、その道の専門のスタッフさんが張り付いてくれるから疑問点にもすぐ答えてくれます。私も子どもにまじって素朴な質問をしまくってました。大人だけの場だと、構えて分かってる感を出してしまいますが、子ども主体のイベントだと素直に楽しめますよ。なにより、丸投げで子どもをお願いできるのが楽すぎる…。
保健所の「手洗い実験教室」イベントの内容
衛生教育の一環として、全国的に行われているのが「手洗い教室」です。簡単に言えば、手を洗う前と後の汚れの状態を比較するものです。出張教室として幼稚園や小学校でも開催しているようです。
今回参加したのは、保健所が会場となったものです。内容は実験が前半、後半の2種類。最後に総論と質問コーナーといった具合です。
1.菌を実際に見てみよう

顕微鏡をのぞく

モニターに拡大
電子顕微鏡で、大腸菌や黄色ブドウ球菌を観察しました。黄色ブドウ球菌は丸くブドウの房のように見えることからその名が付いたそうです。動物や人間の花や喉、腸などに存在。大腸菌はその名の通り、動物や人間の腸に住んでいます。基本的に悪さをするものではないが、なかには下痢などの症状を引き起こすものもいます。
右
子どもたちが培養させた菌を恐るおそる見ている様子が、ほほえましかったです。さわっても害はないのかとか、部屋の中に菌が出て増えないのかとか、職員さんを取り巻いて質問攻めにしていました。中には電子顕微鏡の値段を知りたがる子もいて笑いを誘っていました。

dav

dav
大人も興味深かったのが、それぞれの菌のニオイをかがせてもらったことです。大腸菌自体ははっきりとわかるほどのニオイはありません。問題は黄色ブドウ球菌。脱ぎ捨てた靴下だとか、運動部の更衣室のニオイだとか、大人も子供もキャーキャー騒いでひと盛り上がり。その後、家に帰ってからもお父さんの靴下のニオイをかいで、「黄色ブドウ球菌だー」とはしゃいでいました。夫はなんのこっちゃですが。
2.手洗い実験してみよう
手を洗う前と後で、どのくらい菌を減らすことができるかという実験です。石けんを使った時とアルコール消毒したときのサンプルもありますが、やはり実際にやってみなくちゃ分からないということで実験です。

ぐりぐりとって

じゃーん
試薬を手にまんべんなく塗り、ぬぐったものをスカウターのような機器で計測。これで菌の数の計測ができるわけですね。うちの子は1万6千という数字を叩き出しました。通常でも2万くらいらしいので、特段汚れているということでもないのですが数値で出ると衝撃ですね。男子は予想通り、菌の多さで勝負を始めていました。…男子。
ここからが本題です。スタッフさんの指導のもと、正しい手洗いのやり方で入念に洗います。手の甲や爪、手首までしっかり洗うのです。なかなかやらないですよね。時間を計ったら、洗い終えるまで2分もかかりました。普段、いかにちゃちゃっと終わらせているかということですよね。

しっかり洗って

仕上がりチェック
洗い残しがないかどうかは「手洗いチェッカー」で確認します。洗ったつもりでも、光にかざすと残っています。歯医者さんで、磨きのこしを染め出しするのと似ていますね。一度体験しておくことで、どこまでやればいいか基準になります。大人もやりたかった…。
3.サインペンを色分けしてみよう
場所を移して、菌とは別の実験も1つありました。実験教室でよく取り上げられている「毛細管現象」を利用したものです。ペーパークロマトグラフィーとも呼ばれています。

ペーパークロマトグラフィーの実験
クロマトグラフィーという方法は今から100年あまり前に発表された方法です。今でも物質(もの)を分けるための便利な方法としていろんなところで使われています。この実験のように紙をつかったペーパークロマトグラフィーは、あまり使われなくなりましたが、紙や水の代わりにいろいろなものを使って、何種類ものクロマトグラフィーが、最先端の科学技術の研究で使われています。また工場で、薬や、いろいろなものを生産するのにも使われています。
(引用:国立研究開発法人産業技術総合研究所より)
同じ色のサインペンでも、メーカーがちがえば出てくる色が異なるのが面白いですね。コーヒーフィルターやサインペン、コップなど家庭にあるものでできるので自宅でも簡単に挑戦できます。
4.専門家に聞いてみよう
保健所さんが開催しているということで、食中毒予防のための方法や人間に害を与える菌についてのお話が主体でした。台所をあずかる者として、ためになることもありました。
一通りお話が終わると、質問コーナー。大人は食中毒対策のことや、夏場の食べ物の扱いについてなど予測できる質問です。一方、子どもは思いっきり根源的というか哲学的な質問を放り込んでくるので、答える方も一苦労。聞いてる側は愉快です。「菌はどんどん増えていくと分かりましたが、最初の1つはどうやってできたんですか?」など。子ども科学電話相談を思い出しました。そんなこんなで、3時間程度の教室もあっという間に終了。
体験しているから子どもも自分で自由研究にまとめやすい
で、肝心の自由研究です。カメラとメモを持たせていたので、教室中に自分で撮影し質問してメモをとっていました。自分で興味をもったことに焦点を当てるから、頭にも入ってくるんでしょうね。終始自分ごととして取り組んでいました。
自宅に戻って、自分で参考資料を探して構成を考えていました。親としては、子どもが選んだ画像をプリントし、模造紙を買ってくるだけ。1,2年前と比べたら雲泥の差です。夏休み最終日に、わたわたしながら親子で仕上げていたのが嘘のようです。単に学年が上がったらという要因が大きいかもしれませんが。
ともあれ、テーマに悩み実験材料やまとめ方に苦労するくらいなら、頼れるところにたよりましょう。楽しいし、自分たちでは出来ないような実験を体験できますよ。
参考 併せて、家庭学習の参考にどうぞ





